愛をウナギにたとえるハワイのことわざ
ハワイには、ちょっと意外な「愛」のことわざがあります。
He puhi ke aloha, he iʻa noho i ke ale.
「愛は puhi のよう。海の洞にすむ魚のようなもの」
ハワイ語のことわざを集めた Mary Kawena Pukui の『ʻŌlelo Noʻeau』の927番に収められている言葉です。
ここでいう puhi は、「ウナギ類」のこと。
愛を花や風にたとえるなら分かります。
でも、なぜウナギなのでしょう?
その答えは、puhi の動きにあります。
愛で心が“くねくね”する?
Pukui の説明によると、このことわざは、愛によって心が落ち着かなくなる様子を、ウナギが身をくねらせる姿に重ねたもの。
好きな人のことが気になる。
会いたい。相手はどう思っているのだろう。
体はじっとしていても、心の中はそわそわ。
そう考えると、「愛はウナギのよう」という少し不思議なたとえが、急に身近に感じられます。
ちなみに puhi には「吹く」という意味もあります。でも、このことわざの puhi は「ウナギ類」。
一つの単語だけを見て訳すと、まったく違う意味になってしまうところも、ハワイ語のおもしろさです。

ハワイにもウナギがいるの?
います。
ただし、日本でおなじみの蒲焼きのウナギをそのまま想像するより、ハワイの海の岩穴に潜むウツボの仲間を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
そして、puhi は昔のハワイの人々にとって、見るだけの魚ではありませんでした。
1902年のハワイ語新聞には、puhi が一部の首長にも好まれ、地域によっては大切にされた魚だったことや、干したものを焼いて客に出した話も残っています。
つまり puhi は、ことわざの中だけに登場する珍しい生きものではなく、昔のハワイの海辺の暮らしに実際にいた、身近な魚だったのです。
そう考えると、「愛は puhi のよう」というたとえも、少し身近に感じられてきます。
だから「愛は puhi のよう」
ここで最初のことわざに戻ると、その景色が少し違って見えてきます。
岩穴に潜む puhi。
その細長い体が、くねくねと動く。
そんな姿をよく知っていた人々が、誰かを思って落ち着かない心を見て、
「まるで puhi みたいだ」
と表した。
花や夕焼けのようなロマンチックなたとえではありません。
でも、だからこそ人間くさくて、なんだか忘れられません。
ハワイのことわざには、自然を美しく飾るだけでなく、身近な生きものの姿から人の心を見つめた言葉もあります。
次に aloha という言葉を見たとき、海の岩穴から顔をのぞかせる puhi を思い出したら――
このことわざは、もう忘れないかもしれません。
参考資料・出典
・Mary Kawena Pukui
『ʻŌlelo Noʻeau: Hawaiian Proverbs & Poetical Sayings』
Bishop Museum Press, 1983, No.927.
・Mary Kawena Pukui & Samuel H. Elbert
『Hawaiian Dictionary: Hawaiian-English, English-Hawaiian』
University of Hawaiʻi Press, Revised and Enlarged Edition, 1986.
・University of Hawaiʻi
Sea Earth Atmosphere Learning
“Structure and Function”
Moray Eels (Muraenidae); puhi.
・D. Kahaulelio
“Ka Oihana Lawaia: Lawaia Puhi”
Ka Nupepa Kuokoa, June 1902.
English translation by Mary Kawena Pukui.
Kaʻiwakīloumoku, Kamehameha Schools.

