ハワイには、200を超える雨の名前が記録されています。
けれど、これは単に「雨を表す単語が200個以上ある」ということではありません。降る時間や強さ、進んでくる方向、音や香りまで、雨の違いを細やかに見分けて名前をつけてきました。
その名前は、メレ(詩や歌)やモオレロ(語り継がれてきた物語や伝承)、19世紀のハワイ語新聞にも残されています。
雨の名前をたどってみると、ハワイの人々が見ていた空の細やかさが、少しずつ見えてきます。
雨に名前をつける島
オアフ島マノアだけを見ても、雨はひとつではありません。
トゥアヒネ(Tuahine)は、マノアに結びつく細かな雨として知られています。
クーカラハレ(Kūkalahale)は、ホノルル周辺に結びつく雨の名前です。家の軒先まで吹き込んでくるような雨として伝えられています。
同じオアフ島でも、土地や降り方の違いによって、異なる雨名が伝えられています。
『Hānau ka Ua: Hawaiian Rain Names』には、こうした雨名が200を超えて収められています。編者たちは長年にわたり、古いメレやチャント(詠唱)、物語、ことわざ、ハワイ語新聞などから雨の名前を集めました。

雨には音も香りもある
ハワイの雨名がおもしろいのは、雨粒の大きさや強さだけを区別しているわけではないことです。
いつ降るのか。何色に見えるのか。どのくらい続くのか。どこからやって来るのか。木々に当たるとどんな音がするのか。どんな香りを運んでくるのか。
そんな違いまで、雨を見分ける手がかりになっていました。
キリフネ(kilihune)は、ごく細かな弱い雨や霧雨、風に飛ばされる細かな水滴を表す言葉です。
雨を「降っている」「降っていない」だけで見るのではなく、その姿を細かく感じ取って言葉にする。雨名には、自然を見る目そのものが残されています。
朝と昼に降るウアケア
マウイ島東部のハナには、ウアケア(Uakea)という雨があります。
1884年のハワイ語新聞には、ウアケアがハナの「名高い雨」として登場します。朝と昼ごろの二度やって来て、土地をカパ(樹皮から作る布)の腰布のように包む雨として描かれています。
記事には、ウアケアが降ると子どもたちが川へ行き、水の流れを滑って遊んだことまで記されています。
雨の名前を調べていると、100年以上前のハナで遊ぶ子どもたちの姿まで見えてくるのです。
ウアケアは、天気を表す名前であると同時に、その土地の日常を伝える言葉でもありました。

眠るほど長い雨もある
雨の特徴を、少しユーモラスに表した名前もあります。
ポオリピリピ(Poʻolipilipi)は、オアフ島カリヒやハワイ島ヒロに結びつく雨の名前です。
伝えられている説明がおもしろく、あまりに長く雨が続くため、人々は横になって雨がやむのを待つ。寝ている時間が長すぎて、頭がまるで道具で削られたようになってしまう――そんな大げさなたとえが名前の由来として残されています。
長雨のしつこさを、少し笑いのある表現に変えたのでしょう。
ハワイ島ワイメアのキープウプウ(Kīpuʻupuʻu)は、冷たさで知られる雨です。肌に鳥肌が立つほどの寒さと結びついています。
雨名には、目に見える景色だけでなく、雨を浴びたときの体の感覚まで残されています。
雨になったアープアケア
雨の名前には、人の物語が隠れているものもあります。
アープアケア(ʻĀpuakea)は、オアフ島東部のコオラウポコに結びつく雨の名前です。
ハワイ語辞典には、アープアケアという美しい女性が、女神ヒイアカ(Hiʻiaka)によって雨の姿になったという伝承が記されています。
雨の名の中に、ひとりの女性の物語まで残されているのです。

霧の女神リーリーノエ
リーリーノエ(Līlīnoe)は、細かな霧や雨を表す言葉であり、女神の名前でもあります。
モオレロでは、マウイ島のハレアカラやハワイ島のマウナケアの霧と結びつく存在として伝えられています。雪の女神ポリアフ(Poliʻahu)の妹のひとりとされる物語もあります。
古い伝承の中では、霧や雨の力が、山や火山の世界とも結びついて語られてきました。
空から降る雨、山を包む霧、そこに暮らす人々、そして神々の物語。
ハワイに残る200を超える雨名は、単に言葉の数が多いというだけではありません。
ひとつひとつの名前に、その土地で人々が見て、聞いて、感じてきた空の姿が残されているのです。
出典:参考資料
Collette Leimomi Akana with Kiele Gonzalez, Hānau ka Ua: Hawaiian Rain Names, Kamehameha Publishing, 2015.
Mary Kawena Pukui & Samuel H. Elbert, Hawaiian Dictionary: Hawaiian-English, English-Hawaiian, University of Hawaiʻi Press, 1986.
University of Hawaiʻi at Mānoa, Hawaiʻi Papa o ke Ao, Mānoa Valley Resources.
L. K. N. Paʻahao, “Na Mea Hou o ka Uakea o Hana,” Ko Hawaii Pae Aina, March 22, 1884.
University of Hawaiʻi, School of Ocean and Earth Science and Technology, Hua ʻŌlelo Kālaianiau.
University of Hawaiʻi, Kahoʻiwai, Līlīnoe.
Office of Hawaiian Affairs, Ka Wai Ola, May 2016.
Wehewehe Wikiwiki, Hawaiian Language Dictionaries.

