誰かが訪ねてきたとき、その人をどう迎えるか。
ハワイには、人を迎えることを大切にしてきた文化があります。
ヘアヘア(heahea/親しく呼びかけ、迎えること)は、訪れてきた人に、迎える側から声を届けて歓迎することを表すハワイ語です。
「ヘアヘア」という決まった一言があるわけでも、ひとつの歌や儀式の名前でもありません。普段の呼びかけの場合もあれば、改まった場では歌や詠唱になることもあります。
そして、ヘアヘアは声だけで終わるものではありませんでした。
人を迎え、休める場所をつくり、食べ物を分け、話をする。
そんなホオキパ(hoʻokipa/客を迎え、もてなすこと)の中に、ヘアヘアもありました。
その言葉をたどると、人が来てくれたことを喜ぶハワイの暮らしが見えてきます。
ヘアヘアとは
ハワイ語辞典では、ヘアヘアには「親しく呼びかける」「歓迎する」という意味があります。
また、「親しみやすい」「もてなしのよい」という意味でも使われます。
人が近づいてくると、迎える側からその人へ声を届ける。
それは、相手が来たことに気づき、歓迎していることを伝える行為でした。
場面によっては、歌や詠唱で人を迎えることもあります。
大切なのは、どんな言葉を言うかだけではなく、訪れてきた人をこちらから迎えようとすること。
ヘアヘアは、そんなもてなしの始まりを表す言葉です。
声のあとに続くもの
人を迎えたあとは、その人がくつろげるようにする。
昔の記録には、座るためのマットを広げ、水を出し、食事を用意する様子が残っています。
食べ物も、もてなしの大切な一部でした。
魚や海藻など、その土地にある食べ物が並んだ食卓の記録もあります。
そして、こんな表現も残されています。
アイ・ア・マーオナ、イヌ・ア・ケナ(ʻAi a māʻona, inu a kena/満足するまで食べ、喉が潤うまで飲んで)
少しだけ遠慮して食べるのではなく、十分に食べてほしい。
そんな気持ちが感じられる言葉です。
食事をしながら、どこから来たのか、誰とつながりがあるのか、共通して知っている人はいるのかなどを語ることもありました。
声を届けて迎える。
食べ物を分ける。
同じ場所で話をする。
「歓迎する」というひとつの言葉が、暮らしの中ではさまざまな行動になって表れていたのです。
帰ってきた人を迎える
人を迎えるハワイの姿がよく伝わる記録があります。
1823年、ハワイ島カイムーで、旅の案内人だったマウアエ(Mauae)が数年ぶりに家族のもとへ帰ったときのことです。
同行していた英国人宣教師ウィリアム・エリスが、その再会の様子を書き残しています。
マウアエが帰ってくると、年長者が声をかけ、若い人たちが迎えました。
家族は抱き合い、鼻を触れ合わせ、涙を流して再会を喜びます。
花や香りのある飾りを身につけさせ、姉妹は彼の手を取り、一緒に歩きました。
そして若者や子どもたちは、マウアエのための歌を歌います。
歌われたのは、彼の名前だけではありません。
両親のこと。
生まれた場所。
家族に起きた出来事。
しかも、その歌は帰ってきた日に作られたものではなく、マウアエが生まれたときに作られた歌だったと記されています。
何年も離れていた人が帰ってきたとき、その人が誰で、どの家族につながり、どこで生まれた人なのかまで歌って迎える。
そこには、「おかえり」という一言だけでは表せない再会の喜びがあります。
人を迎えるということ
ヘアヘアは、「歓迎する」と訳せば短い言葉です。
けれども、その言葉が使われてきた暮らしを見ると、もっとたくさんのものが見えてきます。
来た人に気づくこと。
こちらから迎えること。
食べ物を分け、話を聞き、ともに時間を過ごすこと。
久しぶりに帰ってきた人なら、その人が歩いてきた時間まで受け止めること。
ハワイのもてなしは、きれいな言葉を並べることだけではありませんでした。
人が来てくれたことを喜び、その人がここにいてよいのだと、声と行動で伝えること。
ヘアヘアという言葉の向こうには、そんな人を迎えるハワイの姿があります。
参考資料
Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert, Hawaiian Dictionary/ Randie Kamuela Fong, Hoʻokipa: A History of Hawaiian Greeting Practices and Hospitality, University of Hawaiʻi at Mānoa, 1994/ William Ellis, Narrative of a Tour through Hawaii, or Owhyhee, 3rd ed., 1827/ Mary Kawena Pukui, ʻŌlelo Noʻeau
