首もとにかけるレイ(lei/花や葉などを連ねた飾り)や、庭に咲く花。
ハワイの花を楽しむとき、色や形とともに心に残るものがあります。
ふっと届く、花の香りです。
アラ(ʻala/よい香り)は、「芳しい」「よい香りがする」という意味でも使われるハワイ語。匂い全般というより、心地よく香るものを表す言葉です。
レイの花から、風に運ばれる香りまで。
アラという言葉をたどると、目で見るだけではないハワイの景色が見えてきます。
白いつぼみのレイ
香りを楽しむレイの花のひとつに、ピーカケ(pīkake/アラビアンジャスミン)があります。
小さな白い花から漂う、甘く豊かな匂い。
開いた花は星のような姿をしていますが、レイには丸みを帯びたつぼみもよく使われます。
ハワイ大学のレイ用植物の資料でも、ピーカケは通常つぼみの状態でレイに使われ、甘く強い芳香を持つ花として紹介されています。
ただし、つぼみならどれでもよいわけではありません。
レイ用に選ばれるのは、十分に成熟して白くなったつぼみです。
若すぎる黄緑色のつぼみは、摘んだあとに十分開かず、ピーカケらしい香りも現れにくいことが、ハワイ大学の栽培資料に記されています。
花が開ききる前。
けれども、もう花開く準備は整っている。
白いつぼみが連なるピーカケのレイには、形のかわいらしさとともに、小さな花から届く豊かな芳しさがあります。
風にも土地の香り
花の気配は、そのすぐそばだけにとどまりません。
風に乗って、少し離れた場所まで運ばれることがあります。
ハワイ島のプナ(Puna/ハワイ島南東部の地区)には、土地と香りを結ぶ言葉が残されています。
メアリー・カウェナ・プクイが集めたオレロ・ノエアウ(ʻōlelo noʻeau/ことわざ・伝統的な言い回し)には、「プナの香りを運ぶ風」という表現があります。
その解説では、陸から風が吹くと、沖にいる漁師のもとまでマイレやレフア、ハラなどの芳しい気配が届いたと伝えられています。
さらに、プナの風にはモアニ・アラ(Moani ʻAla/芳しいそよ風)という名もあります。
ハワイ大学の気象語彙集では、ハラ(hala/タコノキの仲間)の芳香にちなむ、陸から海へ吹く風として紹介されています。
花の近くで感じる香り。
レイから届く香り。
そして、土地から海へ運ばれていく香り。
ハワイの言葉には、目に見える景色だけでなく、風の中に漂うものまで残されています。
花を見た記憶は、色や形だけとは限りません。
ふと似た香りに出会ったとき、ハワイの花やレイ、やわらかな風まで一緒によみがえることがあります。
アラという小さな言葉の向こうには、そんな香りのあるハワイが広がっています。
参考資料
Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert, Hawaiian Dictionary/ University of Hawaiʻi CTAHR, Growing Plants for Hawaiian Lei, “pikake,” p.121/ Kenneth W. Leonhardt, Glenn I. Teves, Pikake: A Fragrant-Flowered Plant for Landscapes and Lei Production, OF-29, April 2002/ Bishop Museum, Hawaiian Ethnobotany Online Database, “ʻōhiʻa lehua,” ʻŌlelo Noʻeau XIX/ Kaliko High, Hua ʻŌlelo Kālaianiau, 2022, “Moani ʻAla,” University of Hawaiʻi SOEST/ University of Hawaiʻi, Kahoʻiwai, “Puna (Hawaiʻi)”
