太陽が沈み、海も山も暗くなっていくと、ハワイの空には月と星が浮かび上がります。
昔のハワイでは、月がどこまで満ちたかを見て時を知り、星が昇り沈む場所を覚えて、広い海を渡る手がかりにしてきました。
時計もコンパスもない時代。夜空には、時と方向を知るための目印がありました。
月には夜ごとの名前がある
月は、マヒナ(mahina)といいます。マヒナには「月」だけでなく、「月光」や暦の「月」という意味もあります。
ハワイの伝統的な月暦では、月の満ち欠けに合わせて30の夜にそれぞれ名前がつけられていました。
月がほとんど見えないころから、細い月が現れ、少しずつ丸くなって満月を迎え、また細くなって消えていく。その姿の変化とともに、夜の名前も移っていきます。
周期の初めはヒロ(hilo)。続いて、細い三日月が姿を現すホアカ(hoaka)へ進みます。
月が満ちていくと、やがて満月期のホク(hoku)を迎えます。
そして月が再び欠け、最後にやってくるのがムク(muku)。ここで一つの月の周期が終わり、また次の周期が始まります。
こうして見ると、月暦は数字で日付を追う暦とはずいぶん印象が違います。夜空に浮かぶ月の姿そのものが、今が月の周期のどのあたりなのかを知らせてくれます。
月の周期は、日を数えるだけのものでもありませんでした。漁や農耕の時期を考える手がかりとしても使われ、月の満ち欠けと人々の暮らしが結びついていました。

満月のころのホク
月が満ちたころに現れる名前の一つが、ホク(hoku)です。
ホクは単に「満月」を意味する一般語ではなく、伝統的な月暦の中に置かれた夜の名前です。
そして、ここにはよく似たもう一つのハワイ語があります。
星は、ホークー(hōkū)。
月暦のホク(hoku)と、星を表すホークー(hōkū)。よく似ていますが、カハコー(kahakō)の有無によって別の語になります。
ハワイ語では、カハコーも発音や意味を区別する大切な表記の一部です。
月をたどっていたところから、今度は星へ。ハワイの夜空には、もう一つ大切な役割がありました。
星は海の道しるべ
水平線の向こうに陸地が見えなくなっても、空には星があります。
伝統的なポリネシア航海では、航海者は星が水平線のどこから昇り、どこへ沈むのかを覚え、進む方向を判断する手がかりにしました。
けれども、頼りにしたのは星だけではありません。
星や太陽、月、波、風、雲など、自然の手がかりを読みながら海を進む航海術は、ウェイファインディング(wayfinding)と呼ばれています。
その航海術が現代に受け継がれた象徴の一つが、航海カヌーのホクレア(Hōkūleʻa)です。
1976年、ホクレアは近代的な航海計器に頼らず、ハワイからタヒチへの航海を成功させました。
航海を導いたのは、ミクロネシアのサタワル島出身の航海師マウ・ピアイルック(Mau Piailug)。星や波などを読む伝統航海術を受け継いでいた人物です。
ハワイからタヒチまでは、広大な太平洋を越える航海です。水平線の先に目的地が見えているわけではありません。
夜空の星は、遠くに輝く光であると同時に、実際に海を渡るための手がかりでもあったのです。

星をまとめて覚える
では、航海者は数多くの星をどうやって航海に役立てるのでしょう。
現代のハワイのウェイファインディングでは、航海に使う星々を「スターライン」と呼ばれるまとまりで捉えます。
星がどの方向から昇り、どこへ沈むのかを覚え、夜の海で方向を確かめる手がかりにする方法です。
その中には、日本でも「すばる」として知られるプレアデス星団があります。
ハワイでは、マカリイ(Makaliʻi)と呼ばれます。
日本でも昔から親しまれてきた「すばる」が、ハワイではマカリイという名前で知られ、太平洋を渡る航海者たちが見上げる夜空にも輝いています。
月が満ち、欠けていく姿から時を知る。
星が昇り、沈む場所から方向を知る。
ハワイの月と星をたどると、夜空は美しい景色であるだけでなく、長い時間をかけて人々が観察し、読み続けてきた自然だったことが見えてきます。
参考資料・出典
・Pukui, Mary Kawena & Samuel H. Elbert, Hawaiian Dictionary / Wehewehe Wikiwiki
・University of Hawaiʻi, Hawaiian Moon Calendar
・University of Hawaiʻi at Hilo, Hawaiian lunar calendar materials
・Polynesian Voyaging Society, Polynesian Wayfinding
・Polynesian Voyaging Society, Hawaiian Star Lines
・Polynesian Voyaging Society, Hōkūleʻa 1976 Maiden Voyage

