ハワイの山の森で、オヒア・レフア(ʻōhiʻa lehua/ハワイの在来樹木)の赤い花を見上げていると、その間を小さな赤い鳥が忙しく飛び回ることがあります。
アパパネ(ʻapapane/ハワイ固有の小鳥)です。
深紅の体に黒い翼と尾。黒いくちばしを花へ差し入れ、蜜を吸うと、またすぐ次の枝へ。
全長はおよそ13cm。学名は Himatione sanguinea で、ハワイの森に暮らすハワイミツスイの仲間です。
赤い姿だけでも目を引きますが、アパパネを知ると、オヒアの花や鳥の声、森そのものにも目が向くようになります。
赤い鳥を見つける
成鳥のアパパネは鮮やかな赤色をしていますが、翼と尾は黒く、尾の付け根の下側には白い羽があります。
枝に止まった鳥を下から見ると、この白さがちらりと見えることがあります。
もう一つの手がかりは、黒く比較的短いくちばしです。
同じように赤いハワイの鳥、イイヴィ(ʻiʻiwi/ハワイ固有のハワイミツスイ)と比べると違いがよく分かります。
イイヴィは、淡いオレンジ色の長く大きく曲がったくちばしをもっています。
「赤い鳥がいる」と気づいたら、次はくちばしや翼まで見る。
それだけで、森の中の鳥探しが少しおもしろくなります。
ただし、若いアパパネは成鳥とはかなり違い、黄褐色をしています。
赤くないからといって、別の鳥とは限りません。
オヒアを訪ねる理由
アパパネの暮らしと深く結びついているのが、オヒア・レフアです。
オヒアという木に咲く花がレフアで、アパパネはその蜜をよく利用します。虫も食べながら、花の咲いている場所を求めて森を移動します。
花を訪れる時間は長くありません。
ハレアカラ国立公園の解説では、一つ一つの花への滞在は数秒ほどのこともあると紹介されています。
蜜を吸っては次の花へ。
また次の枝へ。
そんな動きを繰り返しながら、アパパネは花粉も運び、オヒアの受粉に関わっています。
鳥にとっては食事。
木にとっては、花粉を運んでもらう機会。
オヒアの赤い花とアパパネの赤い羽は、ただ色が似ているだけの組み合わせではありません。
一羽の鳥を追っていくと、ハワイの森の中で生きもの同士がつながっていることが見えてきます。

声にも個性がある
アパパネを探すとき、目だけでなく耳も手がかりになります。
ただし、「この声がアパパネ」と一つの鳴き方だけを覚えるのは難しい鳥です。
米国国立公園局は、アパパネの歌や声には変化があり、島による違いだけでなく、同じ島の中でも違いがみられると紹介しています。
ハワイ島で行われた音声研究でも、場所によって使われる音の種類に違いが確認されています。
同じ種類の鳥でも、どこにいてもまったく同じ声というわけではない。
そう知っていると、姿を探すだけでなく、森の中で聞こえてくる声そのものにも興味がわいてきます。
枝の上で赤い姿を見つけたら、少し耳を澄ませてみる。
その鳥がどんな声を出しているのかまで聞けたら、アパパネとの出会いはもっと印象に残りそうです。
赤い羽とハワイ文化
アパパネの赤い羽は、ハワイの森だけでなく、人の文化ともつながってきました。
ハワイでは、鳥の羽を用いた美しい羽毛細工がつくられ、王族や首長に関わる衣装や装飾にも使われました。
ビショップ博物館は、赤い羽にはイイヴィの羽が使われ、作品によってはアパパネの羽も見られると説明しています。
赤い羽には、身分や権威を表す役割もありました。
ただし、赤い羽毛細工を見て、そのすべてがアパパネの羽だと判断することはできません。
博物館で羽毛細工を見るとき、
「この赤は、どの鳥の羽だろう」
と少し立ち止まってみる。
すると、展示室の中にある作品と、山のオヒアの間を飛び回る鳥が、同じハワイの物語の中につながって見えてきます。
写真は、カメハメハ4世からレディ・ジェーン・フランクリンに贈られた羽毛ケープ。赤い部分の一部にアパパネの羽が使われています。

Bernice Pauahi Bishop Museum / Wikimedia Commons / Public Domain
森で出会うために
アパパネは、ハワイ島、マウイ島、カウアイ島などの森林に生息し、オアフ島にも分布しています。
とくにオヒアが育つ山地の森は、アパパネを探す場所の一つです。
マウイ島のハレアカラ国立公園では、ホズマー・グローブが森林鳥を観察できる場所として紹介されています。
比較的目にする機会のあるハワイミツスイですが、鳥マラリアや生息地の変化などの影響を受けています。
だからこそ、出会えたときは近づきすぎず、その鳥が食事を続けられる距離から眺めたいものです。
オヒアの花の間に、赤いものが動く。
黒いくちばしが花へ伸びる。
鳥が向きを変えた瞬間、白い羽がちらりとのぞく。
次にハワイの森を歩くとき、そんな小さな動きを見つけられたら、その景色は以前とは少し違って見えるかもしれません。
アパパネを知ることは、一羽の赤い鳥の名前を覚えることだけではありません。
その鳥が訪れる花を知り、声に耳を澄ませ、森と文化のつながりまで見つけること。
赤い鳥を追った先には、ハワイの森そのものが広がっています。
参考資料
Fancy & Ralph(1997), ʻApapane, The Birds of North America 296/ National Park Service, Native Hawaiian Forest Birds/ National Park Service, Native Hawaiian Forest Birds of Hawaiʻi Volcanoes/ U.S. Fish & Wildlife Service, ʻApapane, July 2024/ Sebastián-González et al.(2025), Acoustic Traits of Three Hawaiian Honeycreepers in a Fragmented Landscape/ Bishop Museum, Wings—Birds & Feathers of Hawaiʻi/ Cornell Lab of Ornithology, Apapane Life History

