キラウエアより、ずっと前の物語
ペレと聞けば、燃える溶岩やキラウエアの火を思い浮かべる人が多いかもしれません。
けれど、物語の始まりに、その景色はまだありません。
Hoʻoulumāhiehie(ホオウルマーヒエヒエ)が伝えた『Ka Moʻolelo o Hiʻiakaikapoliopele』の冒頭で、ペレは兄弟や姉妹たちとともに、海の彼方からやって来た一族として姿を現します。
彼らが来たのは、ポラポラ(Polapola)と呼ばれる土地。
ハワイの伝承には、祖先の故郷や海の彼方の土地を指す「カヒキ(Kahiki)」という言葉がたびたび登場します。ポラポラも、そうした遠い世界にある土地として語られています。
ペレはひとりではありませんでした。
一族のなかには、末の妹ヒイアカイカポリオペレ(Hiʻiakaikapoliopele)もいます。のちに壮大な旅の主人公となるヒイアカですが、このときはまだ、姉ペレとともに海を渡ってきた末の妹です。
ペレ一族が求めていたのは、自分たちが暮らし、ペレの火をとどめることのできる土地でした。
その場所を探して、一行はハワイの島々を西から東へたどっていきます。
そして最初に現れたのは、ニイハウでもカウアイでもありません。
広い海の中に浮かぶ、小さな島。
カウラ(Kaʻula)でした。
カウラに残った守り手
カウラに着いたペレ一族は、ここで最初の別れを迎えます。
兄弟のひとり、クーヘイモアナ(Kūheimoana)が、この島の守り手として残ることになったのです。
この出来事は、ペレの旅が単なる「移動の物語」ではないことを早くも教えてくれます。一族はひとつの目的地へ全員で向かうのではなく、渡った土地にそれぞれの結びつきを残しながら、ハワイ諸島を進んでいきます。
ペレたちはクーヘイモアナをカウラに残し、次の島へ向かいました。
ニイハウ(Niʻihau)です。
現在の地図で見ると、カウラからニイハウ、そしてその東のカウアイへと、島々が少しずつ連なっています。物語の道筋も、その並びをたどるように東へ伸びていきます。
ニイハウでも、ペレは自分の火をとどめられる場所を求めました。
けれど、一族の旅はここでは終わりません。
海の向こうには、さらに大きなカウアイ(Kauaʻi)が待っていました。

カウラに残った守り手
カウラに着いたペレ一族は、ここで兄弟のひとり、クーヘイモアナ(Kūheimoana)を残します。
クーヘイモアナは、この小さな島の守り手となりました。
海の彼方からともにやって来た一族のひとりが、ここで初めてハワイの土地と結びつくことになります。
ペレたちは再び海へ出ました。
次に向かったのは、カウラの北東にあるニイハウ(Niʻihau)です。
ニイハウでも、ペレは火をとどめられる土地を探します。しかし、ここに腰を落ち着けることはありませんでした。
そのさらに東には、カウアイ(Kauaʻi)があります。
ペレ一族は、次の島へ渡ります。

カウアイで出会う、もうひとつのキーラウエア
カウアイ(Kauaʻi)に渡ったペレは、島の各地で地面を掘り、自分の火を宿せる場所を確かめていきます。
その途中で、見覚えのある名前が現れます。
キーラウエア(Kīlauea)。
「キラウエアなら、ハワイ島の火山では?」
そう思うところですが、この場面はまだハワイ島へ着くずっと前です。
実はカウアイ島の北部にも、現在までキーラウエアという地名が残っています。ペレがのちに深く結びつくハワイ島のキラウエアとは、別の土地です。
物語では、ペレはこのキーラウエアにも地面を掘ります。しかし、そこは浅く、彼女が求める場所にはなりませんでした。
同じ「キーラウエア」という名が、旅の途中のカウアイと、これから向かうハワイ島の両方に現れる。
古いモオレロをたどっていると、こうして現在のハワイの地図の上に、思いがけない物語の足跡が浮かび上がってきます。

やがてペレ一族はカウアイを離れます。
次に渡るのはオアフ(Oʻahu)。
そこでは、今もよく知られている山や土地が、ペレの旅の舞台として次々に姿を現します。
オアフでつながる、いまのハワイ
カウアイを離れたペレ一族は、海峡を越えてオアフ(Oʻahu)へ渡ります。
ここから、物語の舞台がぐっと身近になります。
ペレが火の住処を求めてたどった場所には、カエナ(Kaʻena)周辺、モアナルア(Moanalua)のアリアパアカイ(ʻAliapaʻakai)、プウオワイナ(Pūowaina)、そしてレーアヒ(Lēʻahi)が登場します。
レーアヒは、現在「ダイヤモンドヘッド」と呼ばれているあの山です。
いま観光客が眺めるホノルルの風景の中にも、ペレの旅の舞台が残っているのです。
ところがオアフでは、ペレが地面を掘ると海水が入り込みました。
火をとどめたいペレに対して、地面の下から現れるのは水。
カウアイとはまた違う理由で、オアフも一族が落ち着く場所にはなりませんでした。
そしてここでも、一族のひとりが土地と結びつきます。
カラエオカエナ(Kalaeokaʻena)が、オアフ西端のカエナを守る者として残されたのです。
ペレたちはさらに東へ向かいます。
その先にはモロカイ、カホオラヴェ、そして巨大なハレアカラーを抱くマウイが待っていました。

ハレアカラーの先に、最後の大きな島
オアフを離れた一行は、モロカイ(Molokaʻi)を経て、カホオラヴェ(Kahoʻolawe)へ向かいます。
カホオラヴェで物語に姿を見せるのが、ペレの兄弟カモホアリイ(Kamohoaliʻi)です。
カモホアリイは海と深く結びつく存在で、この場面ではサメの姿でカホオラヴェにいると語られます。火のペレが島々の地面を探る一方で、兄弟のひとりは海の世界と結びついている――ペレ一族の物語が、火だけの物語ではないことも見えてきます。
やがて一行はマウイ(Maui)へ渡りました。
そこにそびえるのが、ハレアカラー(Haleakalā)です。
ペレはこの大きな山でも地面を掘りました。しかし、入り込んできた海水のため、火をとどめることはできません。
ポラポラを出てから、いくつの海を越えてきたのでしょう。
カウラ、ニイハウ、カウアイ、オアフ、モロカイ、カホオラヴェ、そしてマウイ。
それでも、ペレが探す土地はまだ先にありました。
マウイのさらに南東。
一行の前に、ハワイ諸島で最も大きな島――ハワイ島(Hawaiʻi)が現れます。
長かった住処探しは、いよいよ大きな転換点を迎えようとしていました。


