ハワイ王が見た明治日本─カラカウア王の世界一周と皇室との出会い

目 次

世界を駆ける王の決意

1881年、ハワイ王国のカラカウア王(Kalākaua)は、大きな夢を抱えてホノルルの港を旅立ちました。
それは、現役の君主として世界を一周するという、当時としては前代未聞の冒険でした。
王はハワイの独立を守り、世界中の国々と友情を深めるために、自らの足で各国を訪れることを選んだのです。
さらに、ハワイ王国の存在を世界に示し、文化や伝統を広めたいという思いもありました。
カラカウア王は外交が得意で、人々を楽しませることが大好きでした。各国の王宮を訪れるたびに、ハワイのフラ(Hula)や音楽を紹介し、華やかな宴を盛り上げたと言われています。
王が目指した旅のルートには、アジア、ヨーロッパ、アメリカが含まれており、その中には日本もありました。
この旅が、ハワイと日本の新たな関係を築くきっかけとなるのです。

カラカウア王、日本へ上陸

1881年3月4日、カラカウア王(Kalākaua)は世界一周の航海の途中、日本の横浜港に到着しました。 その知らせはすぐに東京にも伝わり、日本政府は王を国賓級の扱いで迎えることを決めました。 王は日本滞在中、銀座の煉瓦街を視察したり、近代化の進む東京の様子を興味深そうに見て回ったと伝えられています。

当時の日本は、明治維新からまだ間もない時代で、西洋式の制度や建物が次々と造られている最中でした。 カラカウア王は、そうした変化に強い関心を持ち、特に皇居や工部大学校などの訪問を希望したといわれます。 王の来日は日本国内でも大きな話題となり、新聞には「南洋の王の訪問」として大きく取り上げられました。

その姿は、絹の礼服に身を包み、胸元にはハワイ王国の勲章がきらめいていたと伝えられています。 そしていよいよ、王は明治天皇との謁見の日を迎えることになるのです。

明治天皇との謁見

カラカウア王(Kalākaua)が最も楽しみにしていたのが、明治天皇との謁見でした。 1881年(明治14年)3月5日、王は正装で皇居を訪れ、明治天皇と対面します。 この謁見は、ハワイと日本の歴史の中で初めての君主同士の出会いであり、両国にとって大きな意味を持つものでした。

当日の王は、絹の礼服に身を包み、ハワイ王国の紋章が輝く勲章を胸に飾っていたと言われます。 会見は丁重かつ友好的に行われ、明治天皇はハワイの文化や人々の暮らしに関心を示したと伝えられています。 王もまた、日本の急速な近代化や美しい礼儀作法に感銘を受けたようでした。


その後、王は皇室の人々と食事をともにする機会もあり、ハワイの状況や文化について話をする場面もあったと伝えられています。 謁見の詳細な記録は少ないものの、当時の新聞は「親しく会話を交わした」と報じており、両国の友好の礎が築かれた瞬間でもありました。

海を越えた絆と残された噂

カラカウア王(Kalākaua)の日本訪問は、短い滞在ながらハワイと日本の関係に大きな一歩を刻みました。
この旅をきっかけに、ハワイ王国は日本を重要なパートナーとみなし、後に日本からの移民がハワイに渡る流れが加速していきます。
一方で、当時カラカウア王が日本の皇女を王家に迎えたいと望んでいたという噂も広まりました。
特に、甥のジョナ・クヒオ・カラニアナオレ(Jonah Kūhiō Kalanianaʻole)王子と日本の皇女との縁談が取り沙汰されたことは有名です。
しかし、日本側の公的記録にはそうした交渉の痕跡は残っておらず、実際に話が進んだ形跡もありません。
この話は、カラカウア王がアジア諸国との絆を強めたいという思いから生まれたものかもしれません。
確かなことは、王の訪問がハワイと日本の間に新たな友情の種をまいたということです。
今もハワイでは、日本との絆を伝える場所やお祭りが多くあり、両国の歴史が生き続けています。
カラカウア王の世界一周の旅は、ハワイの未来への希望と文化をつなぐ、大きな足跡を残しました。

ハワイと日本を結んだ訪問の意味

カラカウア王(Kalākaua)の日本訪問は、短い滞在ながらハワイと日本の未来に大きな影響を残しました。
この旅がきっかけとなり、両国の間には文化的な交流や人々の移動が増えていきました。
王が示した友好の姿勢は、今もハワイに息づく誇りであり、多くの人々の記憶に残っています。
こうしてカラカウア王の旅は、ハワイの独立と文化を未来へ繋ぐ大切な歴史のひとつとなったのです。

参考文献:Noenoe K. Silva, Aloha Betrayed: Native Hawaiian Resistance to American Colonialism, 2004, Duke University Press; Davianna Pōmaikaʻi McGregor, Nā Kuaʻāina: Living Hawaiian Culture, 2007, University of Hawaii Press; Jon M. Van Dyke, Who Owns the Crown Lands of Hawaiʻi?, 2008, University of Hawaii Press; Ralph S. Kuykendall, The Hawaiian Kingdom Volume 3: 1874–1893, 1967, University of Hawaii Press; Gavan Daws, Shoal of Time: A History of the Hawaiian Islands, 1968, University of Hawaii Press

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