【歴史③】稲妻の夜に生まれた孤高の子─カメハメハ誕生と少年期

目 次

稲妻が告げた運命の子

嵐の夜の誕生

ハワイ島コハラの夜空を稲妻が幾度も引き裂き、海はうねり、波は岩を打ちつけていました。

その激しい嵐のただ中、ひとりの赤子が産声をあげます。

彼の名はカメハメハ──「孤立する者」を意味する名を授かった子は、火の女神ペレの怒りを思わせる空模様とともに生まれたのです。

その誕生は、古から伝わる「波を制する者」の予言を思い出させ、王族たちの間に不穏な空気を走らせました。

出典:Kuykendall, R. S. (1938). The Hawaiian Kingdom Vol. 1; Kamakau, S. M. (1869). Ruling Chiefs of Hawaii.

王族の中で恐れられた赤子

命を狙われた運命

王族の血を引き、予言の子とささやかれたカメハメハの存在は、一部のアリイたちにとって脅威でした。

「この子が大きくなれば、自分たちの地位が脅かされる」と恐れた彼らは、密かにその命を奪おうと企てたと伝わります。

火の女神ペレが怒る夜に生まれた子は、人々の期待と同じくらいの恐怖を背負わされたのです。

出典:Kuykendall, R. S. (1938). The Hawaiian Kingdom Vol. 1; Kamakau, S. M. (1869). Ruling Chiefs of Hawaii.

隠された少年時代

谷間で守られた幼き日々

危機を察した一部の親族や側近たちは、生まれて間もないカメハメハを密かに連れ出し、コハラの奥深い谷にかくまいました。

そこには滝の音と波の響きしか届かず、険しい山々が外からの侵入を拒んでいました。

乳母たちはアロハの心で彼を育て、夜になると火を囲みながら古い王家の物語を聞かせたといいます。

孤独な幼い彼は、その中で次第に王としての資質を身につけていきました。

出典:Kuykendall, R. S. (1938). The Hawaiian Kingdom Vol. 1; Kamakau, S. M. (1869). Ruling Chiefs of Hawaii.

ナハ・ストーンに挑む

未来を告げた巨石

成長したカメハメハに、ひとつの試練が訪れます。

それは「ナハ・ストーン」という巨大な石を動かすこと──古来より、この石を動かせた者が王になると信じられていました。

多くの若者たちが挑み、微動だにしなかったその石を、カメハメハはゆっくりと動かしたと伝わります。

その瞬間、人々は「この少年こそ予言の王」と確信したのです。

しかしそれは、彼が進む血と戦いの道の始まりでもありました。

出典:Kuykendall, R. S. (1938). The Hawaiian Kingdom Vol. 1; Kamakau, S. M. (1869). Ruling Chiefs of Hawaii.

クック船長との衝撃の出会い

神か人か、西洋との遭遇

青年期を迎えたカメハメハの前に、白い帆を掲げた船が現れました。

それはイギリスの探検家、キャプテン・ジェームズ・クックの艦隊でした。

鉄の武器、ガラスの器、見たこともない道具を携えた西洋人たちは、島の人々にとって神々のように映りました。

カメハメハはその姿に強い衝撃を受け、西洋の力を学び取ろうと決意したと伝えられています。

しかしクック船長は、やがてハワイ島で命を落とし、人々に「西洋人も神ではない」という現実を突きつけました。

出典:Kuykendall, R. S. (1938). The Hawaiian Kingdom Vol. 1; Kamakau, S. M. (1869). Ruling Chiefs of Hawaii; Beaglehole, J. C. (1955). The Journals of Captain James Cook.

若き心に芽生えた夢

波の音が告げる未来

クック船長との出会いと別れを経て、カメハメハの胸に一つの決意が固まっていきます。

それは、血で分断された島々を一つにまとめ、民を守る強い王国を作ることでした。

波の音を聞くたびに、彼は心の奥で「全ての人を守りたい」というアロハの想いを強くしていったといいます。

しかしその道は、親族すら敵となる過酷な試練の連続でした。

次回、カメハメハがいかにして血の嵐を超え、王の座を目指すのか──ハワイの運命を変える戦いが始まります。

出典:Kuykendall, R. S. (1938). The Hawaiian Kingdom Vol. 1; Kamakau, S. M. (1869). Ruling Chiefs of Hawaii.

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