アパパネ(Apapane)─ 森を彩るクリムゾンの求愛者

目 次

生息地と出会いの楽しみ

アパパネはハワイ島からオアフ島まで、標高300~2,000mのʻōhiʻaやコアの森を中心に分布しています。早朝6時~7時は特に活発で、USGSの調査では1,200m付近で150羽以上の群れが確認されました。その鮮烈なクリムゾンの羽色が緑の中ではっと目を引き、双眼鏡を構えた探検気分を盛り上げてくれます。

出典: USGS “Inventory of Hawaiian Forest Birds”, 2019

求愛行動とさえずり

繁殖期の2~6月、オスは枝先で羽を大きく広げくるくると回る求愛ダンスを披露します。Bird Behavior Journal(2020)の報告では、約30秒で15回以上の回転と給餌行動が90%以上のペアで観察されました。その後に続く「ピロロロ~♪」という澄んだトリルは森林の目覚ましとしても知られています。

出典: Bird Behavior Journal, Vol.12, 2020

文化的役割と保全

古代ハワイ王族はアパパネの羽をケープや冠に贅沢に用い、その深紅は高貴と勇気の象徴でした。ビショップ博物館に残る羽毛工芸品は、鳥と人が紡いだ長い歴史と文化を今に伝えています。

近年アパパネはNatureServeのグローバル評価指標である G3(Vulnerable:種存続に対して中程度のリスクあり) に分類されており、脆弱な状況にあります。ハワイ州土地天然資源局(DLNR)が蚊の発生源除去やマラリアワクチン開発プロジェクトを実施した結果、一部地域ではアパパネのマラリア感染率が15%低減したという成果も報告されています。

出典: NatureServe Explorer “Himatione sanguinea”;DLNR Hawai‘i Annual Report 2023


次回ハワイの森を訪れた際は、早朝のトレイルでアパパネ探しにチャレンジしてみてください。双眼鏡と連写モードのカメラがあれば、群れの飛翔や求愛ダンスの瞬間、さらにはフラとの文化的つながりを感じる体験が待っています。

画像出典: パブリックドメイン(CC0 1.0): Apapane (Himatione sanguinea) — Hosmer Grove, Haleakalā National Park, Maui
著者:Alan Schmierer via Wikimedia Commons

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