ヌウアヌ・パリ──風が語る戦いと祈りの峠

目 次

静かな物語が流れる峠

オアフ島のホノルルから車でほんの20分ほど。 ヌウアヌ・パリ展望台に立つと、目の前にはコオラウ山脈と風にそよぐ深い谷、その奥に広がるカネオヘ湾が見えてきます。

立っていられないほどの強風。多くの観光客が「風がすごかった!」と驚くこの場所には、じつはただの景色以上のものがあるのです。

それは、ハワイ統一に関わる大きな戦いの舞台であり、そして今も、フラや祈りにとって大切な意味を持つ「場所」でもあります。

カメハメハ大王、最後の決戦の地

1795年、ハワイ島から進軍してきたカメハメハ大王の軍が、オアフの地で待ち受ける勢力と激突しました その最終局面が、このヌウアヌ・パリの崖上だったと言われています。

「ヌウアヌの戦い」と呼ばれるこの戦いでは、多くの兵士が崖から落ちて命を落としたと伝えられており、 今もこの場所に立つと、強い風の中に、どこか切なさのようなものを感じる人も少なくありません。

でもそれは、ただの悲劇の地ではありません。 この勝利によって、カメハメハはハワイの主要な島々を統一する礎を築いたのです。

いまも、祈りの場所として

ヌウアヌ・パリは、観光地として知られる一方で、ハワイの人々にとっては「神聖な場所」として今も敬意を払われています。

風が強く吹くこの場所は、神々の通り道(ʻauraʻa)とされ、フラの曲やチャントでもたびたび歌われるのです。旅先であっても、訪れるときには心を静かに──そんな風に感じる人も多いでしょう。

カメハメハの物語やハワイの歴史を思いながら、パリに立ち、ただ風に包まれてみてください。 きっとあなた自身の中に、何かがそっと語りかけてくれるかもしれません。

出典:Hawaiian Historical Society, “The Battle of Nuʻuanu Pali” / Hawaii State Archives


旅先の強い風が、ただの自然現象ではなく、歴史と祈りの記憶を運ぶものだと気づいたら──あなたの中のハワイが、またひとつ深くなるかもしれません。どうぞ、心をひらいて風の声に耳を澄ませてみてください。