フラに登場する花の色と意味
フラの曲には、特定の花の名前がよく登場します。たとえば「ピカケ」は真っ白で繊細な香りを持つ花で、恋や純粋さを象徴するとされ、衣装も白やクリーム色で揃えることが多いです。
「レフア」は赤いブラシ状の花で、ペレの象徴として知られ、情熱や火山の大地の力を感じさせる赤い衣装がよく使われます。
「プルメリア」は黄色、ピンク、白など色とりどりですが、「歓迎」や「愛情」の意味が込められ、曲のニュアンスに合わせて色を選びます。
こうした色選びは、ただの好みではなく、花の名が出てくる曲では“その花を踊る”という意識を衣装にまで込める、そんな美しい文化の現れでもあります。
出典:Nā Mea Hula, 2022, *Symbolism in Hula Costuming*, Nā Mea Hula

ピカケ (pikake) ─ 画像はJasminum sambac の一重咲きで、ハワイで愛される甘い香りの花
CC BY-SA 3.0 Photo by Badagnani, via Wikimedia Commons, modified
“色を聞く”という選び方
フラでは、歌詞に花の名前や自然の描写が出てこない曲であっても、衣装の色や雰囲気を曲に合わせて選ぶことが大切にされます。
たとえば「Ka Uluwehi O Ke Kai(海の豊かな草たち)」のように海藻や海辺の植物を歌う曲では、緑や水色のパウやドレスがよく選ばれます。
また、「Ke Aloha」や「Lei Hulu」など、愛や思慕をテーマにした曲では、淡いピンクや藤色、落ち着いた紫が好まれる傾向があります。
明るく陽気なメレには鮮やかな花柄、祈りや静けさを感じる曲には単色や控えめな模様。
「色を聞く」と言われるように、目に見える衣装も音楽の一部として踊りの一体感をつくり出すのです。
出典:University of Hawaiʻi at Mānoa, Hawaiian Studies Department, 2021, *Hula Aesthetic Principles*, University of Hawaiʻi at Mānoa
ハラウの「哲学」と自由のバランス
フラの衣装選びには、ハラウ(教室)ごとの明確な方針があります。とくに伝統を重んじるハラウでは、レッスンや発表会で使うパウスカートを「全員同じ色・同じ無地」で揃えることが多く、それによってグループとしての一体感や規律を育むという考えがあります。
一方、個人の表現を尊重するハラウでは、曲やテーマに合った色や柄をそれぞれが選び、より自由なスタイルで踊ることもあります。
ただし、自由に選ぶ場合でも、その色や柄に文化的な意味があることを理解しておくことが大切です。知らずに使うと、意図せず不敬と受け取られてしまうケースもあるからです。
だからこそ、ハワイのクム(指導者)たちは、衣装は単なる飾りではなく、“曲の一部”として選ぶよう教えているのです。
出典:Hula Preservation Society, 2020, *Perspectives from Kumu Hula*, Hula Preservation Society
衣装選びのタブー─誤解を避ける
ハワイの文化には「色」「模様」「レイの種類」にまつわる意味やタブーがいくつもあります。
たとえば、「黄色」はカメハメハ大王の王家の色として尊重され、「マモ (mamo)」という花のレイとともに特別な存在感を持ちます。
また、「ペレ」に関する曲を踊るときに、レフアのレイを付けずに白いバラを使ったりすると、内容とのずれが生じてしまう場合もあります。
さらに「カパ(樹皮布)柄」は神聖なモチーフとされており、カジュアルな場面や誤った解釈で使用すると、本来の意味を損なうことになりかねません。
こうした文化的背景を知らずに使うことは、そういうつもりでなくても“失礼”にあたることがあるのです。
出典:Bishop Museum Cultural Collections, 2019, *Cultural Protocols in Hula*, Bishop Museum
