【歴史④】波を超える王─カメハメハ大王、戦いの序章
若き王子の決断と集結する力
カメハメハ、仲間を求める日々
ナハ・ストーン(Naha Stone)を動かしたあの日から、カメハメハは「ハワイをひとつにする」という夢を胸に抱き続けていました。
しかし、それは孤独な道のりでした。島々のアリイ(Aliʻi=首長階級)たちは強大な力を持ち、それぞれの領土と民を守るために武器を握っていたのです。
史料には「若きカメハメハは、友を失い、また仲間を得た」と記されており、彼が信頼できる戦士や側近を少しずつ集めていく過程が語られています。
特に彼のそばには、強靭な戦士たちや、海の動きを読む航海士、そして戦略に長けた古参の家臣が加わり、やがて彼の小さな軍団は島々の脅威となりはじめました。
その背後には、彼自身の強いカリスマ性と「民を守りたい」というアロハ(Aloha)の心があり、人々は少しずつ、彼こそが新しい時代を作る王だと感じ始めたのです。
出典:Hawaii State Archives(https://digitalarchives.hawaii.gov/)
最初の戦火、ハワイ島の動乱
血で染まるコハラとヒロ
カメハメハが初めて大きな戦いを指揮したのは、ハワイ島北部コハラ(Kohala)と東部ヒロ(Hilo)を巡る争いでした。
この時代、ハワイ島を治めていたのはカラニオプウ(Kalaniʻōpuʻu)。彼はカメハメハの伯父であり、強大な王として知られていましたが、年老いた彼の治世には徐々にほころびが生じていました。
史料によると、王位継承を巡る緊張が高まり、カメハメハを推す一派と、従来の権力を維持しようとする一派が激しく対立するようになったと伝えられています。
このとき、若きカメハメハは初めて「自らの手で未来を切り開く」覚悟を固めたといわれます。彼は鋭い戦略と圧倒的なカリスマで周囲を引き込み、コハラやヒロで局地的な戦いを繰り広げたのです。
この戦いは島々に「新しい王が現れた」という噂を広げるきっかけとなり、カメハメハの名前は民の間で急速に広がっていきました。
出典:Hawaii State Archives(https://digitalarchives.hawaii.gov/)
カヘキリとの対峙、マウイの火花
マウイ島を狙う若き王子
ハワイ島で力をつけたカメハメハは、ついに次の目標に目を向けます。それは、強大な王カヘキリ(Kahekili)が支配するマウイ島でした。
カヘキリは「稲妻の顔を持つ王」と呼ばれ、その顔には稲妻の入れ墨が刻まれていたと史料に記されています。彼の支配するマウイ島は強力な軍を持ち、他の島々にとっても恐れの存在でした。
しかしカメハメハは、マウイ島を制することがハワイ統一の鍵だと考え、兵を集め、海を越える準備を進めます。史料には「波を制する者は、海を越えて王国を手に入れる」とも記されており、カメハメハにとってマウイ遠征は避けては通れぬ道だったのです。
この頃、カメハメハは戦いの技術だけでなく、交易や同盟といった政治の知恵をも身につけはじめていました。海の向こうに稲妻が光るたび、人々は「いよいよハワイに大きな変化が訪れる」と感じ始めていたのです。
出典:Hawaii State Archives(https://digitalarchives.hawaii.gov/)
ママラフの戦いとカメハメハの勝利
鉄の武器がもたらした勝機
ついにカメハメハは、マウイ島への遠征を実行に移します。
その戦いの舞台となったのがママラフ(Māmalaʻu)の海域でした。史料によると、この戦いは海上戦と陸戦が入り混じり、かつてない規模で繰り広げられたと伝えられています。
カメハメハの軍勢には、当時としては驚異的な武器がありました。それが西洋からもたらされた鉄の武器(Iron Weapons)や銃(Gun)です。彼は交易を通じて西洋の武器を手に入れ、戦いに活かす方法を学んでいました。
史料には「鉄が血を呼び、銃声が海の上に響いた」と書かれており、それまでの戦いとはまったく異なる様相を呈していたといいます。
この戦いに勝利したカメハメハは、マウイ島の一部を支配下に置き、ついに「ハワイ統一に最も近い男」と呼ばれるようになります。
しかし、彼の前にはまだカヘキリやオアフのアリイたちという、手ごわい敵が立ちはだかっていました。
出典:Hawaii State Archives(https://digitalarchives.hawaii.gov/)
統一への道、運命を決める戦いへ
カメハメハが見据えた未来
マウイ島での勝利は、カメハメハの名をさらに大きくしました。しかし彼自身は「まだ道半ば」と感じていたと史料は伝えています。
ハワイ統一という大きな夢の前には、カヘキリの勢力や、オアフ島をはじめとする他の島々が立ち塞がっていました。
史料には「海の王となる者は、血と涙を越えねばならぬ」と記されており、彼がこれから直面する戦いの厳しさを物語っています。
カメハメハは、ただ武力だけでなく、交易や外交、民の心をつかむアロハ(Aloha)の精神を武器に、新たな戦いに挑もうとしていました。
次回、カメハメハはついにハワイ全土を揺るがす大決戦に挑みます。その戦いがどのようにハワイの未来を変えるのか──波が告げるその行方を、どうぞお楽しみに。
出典:Hawaii State Archives(https://digitalarchives.hawaii.gov/)